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たまにブレてもなるべくボケない写真のブログ

主に写真のことを書きます。たまに野球のこと、電車の中のこと、アジカンのこと。

希はあなたのもう一つの人生だったかもしれない

 土屋太鳳が主演ということでずっと追いかけてきた朝ドラ「まれ」、いよいよ明日で最終回。インターネット上でいろんな人の感想を読んでいると、賛否両論あったドラマだったように思う。というか、かなりディスられてたように思う。

 確かに、このドラマには―とくに希の行動には―多くの違和感があった。世界一になるという夢を掲げて横浜に旅立つ情熱がありながら、フランス留学を蹴って能登に戻るのか?地道に人生設計を考えていたはずなのに、妊娠して開店したばかりの店を休むのか?

 しかし、これらの点は見方を変えるとものすごく「リアル」でもある。世界一になる!と言って、希のような若さでまっすぐに世界を目指し続け、紆余曲折なく本当に天下を獲るということがありうるだろうか。そうそうある話ではないだろう。女性が結婚をして、いつしか子供ができて、子供を産んで家族と幸せに暮らす、ということがよくある方の話だろう。テレビの前にいる人々の多数派は、間違いなく後者だ。

 希は、大事なところではいつも自分以外の人を優先している。圭太がピンチになれば能登へ帰り女将修行をし、ケーキのコンクールと子供たちの相撲大会が重なればケーキを放り出して応援に行ってしまう。これは、世界一を目指すパティシエの行動としては失格なのだろう。陶子さんの言葉を借りるならば「な~め~す~ぎ~」だ。でも、圭太の妻であるならば?子供たちの母親だとすれば?これらの行動は決して間違っていない。そして、このドラマの大きなテーマである「家族の助け合い」を体現している。徹への「家族はいっしょにいるだけでいい」という言葉は、希が言うからこそ、重みがあるのではないか。希が家族に支えられていなければ、(世界一にはなってないけれど)パティシエとしてのここまでの成長はなかったのだから。考えてもみてほしい。最初、大悟は希のケーキを「まずい。一番まずかった」とまるで相手にしなかった。しかし、今では希のケーキを食べるためにわざわざ横浜から能登に出てくるまでだ。

 世界一になる!と言って本当に世界一になったら、それは確かにすばらしいことだし、かっこいい。だけど、その完璧なまでにかっこいい希を、僕らは愛することができるだろうか。普通に恋愛して、友と喧嘩をして仲直りして、結婚をし、出産して、仕事も頑張って、ときどき道を間違える。でも、家族を愛するという一点に関してはブレなかった希だから、一部の人々が激しく批判をしたのではないか。まるでそれが、家族のために夢を捨てた自分の人生であるかのように。

 紺谷希というひとりの女性の幼少期からここまでを描き切った脚本の篠崎恵理子は、すばらしいと思う。よくやったと思う。ドラマの中だからこそ、希は世界一に向けて脇目もふらずに努力するべきだったのかもしれないが、その希の姿は現実的ではない。希の不器用姿のひとつひとつが、多くの人に心当たりのあるものだったのだ。希を手厳しく批判する人々は、自分の経験を思い出しながらそうしているのではないだろうか。そして、家族のために自分の夢を犠牲にしてきた多くの人々にとって、希の行く道が厳しいものであることがわかっているから、このドラマを観ていて辛くなるのではないだろうか。

 細かい整合性やせりふ回し、演出で気になる箇所はたくさんあった。自分の経験から照らし合わせて、観たくなくなる人も多かったかもしれない。それでも、「まれ」は明確な意図が見えるドラマだったと思う。家族、夢。ありふれていて難しいテーマで、半年間楽しませてくれた。明日の最終回、しっかりと見届けたい。

 

 さて、本筋からずれますが、「観てないけどなんか叩かれてるから俺もとりあえず叩いておこう」って思ってるださい人があまりに多いと感じました。そこで、1話目からずっと観てる者として、肯定的な意見を書かせてもらいました。明日以降、まれの総括として記事を書きたいと思います。ここまで長い文章を最後まで読んでくれてありがとうございました。それでは。

 

9月26日。