帰りの電車と不機嫌な女性
向かいの席にいた女性がとっても不機嫌そうだった。
白いイヤホンで周囲の雑音をシャットアウトしつつ、空気中のどこか一点を睨み付け、視線を外し、また別の一点を睨み付けていた。
あぁ、ちょっと大きな声で話しすぎたかな、と俺は友達との履修登録トークの声のボリュームをすこし落とした。
すこし落とした次の駅で、飲み会帰りっぽいおじさんおばさん集団がガヤガヤと乗り込んできたので、俺の配慮は全く意味をなさなくなった。
でもその一方で、ちょっとだけ安心もしてしまった。
不機嫌そうな女性はどこかの駅で不機嫌そうに降りていった。もしかしたら別に機嫌が悪かったのではなくて、ただ単にそういう風に見えやすい人だったのかもしれない。真相は闇の中。
とりあえず、うるさくしてゴメン。
4月6日。